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邦題が本当にアレだけど, 映画はすごくよかった.

Introduction

この映画, 一度だけ Twitter で話題にしたんですよね. #女性映画が日本に来るとこうなる というハッシュタグが流行った少しあとくらい時期でした.

[https://twitter.com/515hikaru/status/778384747252752384:embed#ある天文学者の恋文、という映画が明日から公開らしくポスターを見たのだが、やはりというかなんというか #女性映画が日本に来るとこうなる 案件だった https://t.co/vDqJ0fki0Z]

この時点で見ると決めていたのですが, 風邪をひいてしまい一週間ずれ込みました. それでも見れてよかったです. これは本当にいい映画です. 邦題が「恋文」と余計な文脈を付していたり((そもそも手紙以外にも動画とかメールとか, しまいには天体物理学の講義まで届けているのにそれを恋文と訳す杜撰さがが本当に許せない.)), 日本のポスターと現地のポスターで雰囲気がまるで違っていたりと色々ありまして, いろいろ言いたいことありますが, いかんせんこの映画の中身が非常に良いのでどうでもいいのでそんなくだらないことに時間を割きたくない. この文書をここまで読んだ人は, 早く見に行ってください. 法に触れない程度のルール違反は許すのでなんとしてでも見てください.

ちなみに原題は Correspondence, イタリア映画です. 本編英語で喋ってますけどね.

相変わらずネタバレなのかネタバレじゃないのかよくわからない感じで書いています. こういう映画はネタバレということもない気もしますが.

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Staff & Cast

いやー, アニメのスタッフやキャストにも詳しくないとは思ってはいましたが, 今回のスタッフ本当に全くわからないんですよね. ポスターには「あの, トルナトーレ監督の最新作!」みたいに書いてあるけど, いや過去作ひとつも知らないんですよねぇという感じ(超失礼). そんな僕なんで, 今回パンフレットを買いました. それを見ながらスタッフやキャスト紹介を書こうと思います.

まず監督・脚本はジュゼッペ・トルナトーレ. イタリアの映画監督で, 他の作品には, 「鑑定士と顔のない依頼人」(2013 年)があり, イタリアの映画で最高の賞, ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞の作品賞・監督賞など 6 部門を獲得し, 日本でも大ヒットを記録. ごめん知らない. 大学 2 年生の頃はたぶん全く映画見てなかった.

音楽はエンニオ・モリコーネ. 1989 年のトルナトーレ監督の作品「ニュー・シネマ・パラダイス」での音楽が絶賛され, それ以後トルナトーレ監督とのコラボレーションが続き, 全作品を手がけている. この人の音楽だと思って聴いてはいなかったけど, この映画の音楽はすごく良かったですね.

キャストは, まずエドワード・フィーラム教授はジュレミー・アイアンズ. どちらかというと完璧な言葉遣いが多い今作だけど, 最後のメッセージは圧巻だったなぁ. 次に, エド教授の教え子かつ恋人かつスタントマンのエイミー・ライアン役はオルガ・キュルレンコ. 言われるまで気づかなかったんですが, この方「薬指の標本」で主演してた人ですね. 作中でスタントシーンがあったりするのですが, アクションしたりそもそもメイクや髪型で全然違う人間に見えたり, かなり凄い(こなみ)って感じの女性です. 今後大注目ですね.

[http://hikaru515.hatenablog.com/entry/2015/09/22/015636:embed:cite]

他にも, 出番は多くないけど複雑な胸中を語ったエド教授の娘(ショーナ・マクドナルド), 島までの船乗りオッタヴィオ(パオロ・カラブレージ), 別荘の管理人アンジェラ(アンナ・サヴァ). エイミーの母親(イリーナ・カラ)など.

Summary

君が知っていて, 僕は知らない君のことは本当にないかい?

天文学を志すエイミー・ライアンは, 自らの指導教員であるエドワード・フィーラム教授に恋をしていた. エドはなかなか会えない彼女にビデオメッセージや Skype 通話などで連絡を取り合い, iPhone からはショートメッセージ, メール, 電話がひっきりなしに届いていた.

ふたりが出会って 6 年目の記念日, エドからのビデオメッセージと花束を受け取った彼女は, 翌日講義に向かう. エドは講義には行けないと代役を頼んだようで, メールには「代役は誰かな? 嫉妬しちゃうよ」などと書かれている.

講義をそこそこにメールの返信をしていると, 代理の教授が告げる, 「今日の講義を担当するはずだったエドワード・フィーラム教授が, 残念ながら亡くなりました」と. 事態を飲み込めない彼女, 全く同じ文面ではあるが何度も来るエドからの返信, しかしネットニュースも死を報じている, 頭が真っ白になった彼女はエドが暮らすエディンバラに向かう……

Impressions

君は消えたがっている. なのに君の周りから消えていく.

ウィットに富んだ言葉の数々

天体物理学なんて全く知らないけれど, 科学的な部分も(ほとんど物語には関係しない割には)全く根拠のないジョークではなく結構考えられている様子で, 特にエイミーが博士号を取るシーンなんか何言っているのか全然わからないのだけれど, エイミーはわかっているというのが伝わってくるのが凄い.

エドとエイミーの会話は恋愛ごとのときはともかく, 専門の話題の時はお互いにかなりの自信を持って話しているのが伝わってきて, 弦理論は幻想かどうかとか, 11 人の自己がどうのこうのというシーンは結構いいなぁと. 僕もこんなジョークを合コンで言いたい. 嘘です.

iPhone, PC

ものすごい回数 iPhone と PC が画面に移る. 久しぶりに Windows Media Player を見たけど, まさか映画のスクリーンで見ることになるとは思わなかった. かなりハイテクな映画で, ふたりとも理系だからパソコンの操作なんかはお手の物という設定だったんだろう.

ヒューレットパッカードの PC から Samsung の PC に換わるシーンなんかは結構個人的には好みだった. でも iPhone は変わらなかった. あと作中の iPhone にはイヤフォンジャックがまだありました(撮影時期を考えると当たり前).

iPhone に関連して, もう一言. Where are you? を Where r u とショートメッセージで書くことがある. こういうの向こうの人からすると当たり前((日本人が「今どこにいますか」を「いまどこ」と書くのと本質的に変わらない.))なんだろうけど, 個人的には「おー」ってなった.

あと, 映画で iPhone に書き上げる文章は全て俳優が声に出しているのだけれど((声に出すのと入力するのがペース同じだから入力ペースがめちゃくちゃ早いことが分かる.)), これもかなり Good. そもそも携帯によるコミュニケーションのおかげで, 仮に死んだとしても生きているように振る舞うことができるというのがこの映画の, というよりエドがやったことだから, それを序盤から示唆する役割を果たしていると言う意味でも iPhone の存在感は大きかった.

生き続けることの呪縛

エドが選んだのは, 彼女のためにもう少し「生きる」ことだった.

現代のテクノロジーを使えば, こんな風にして擬似的に生きているように見せかけることさえもできる. もちろん, 周到な準備と相当な人脈, 何よりエイミーに対する深い理解が必要なのは間違いないのだけれど. そうまでして彼は彼女に何を伝えたかったんだろう.

エドはエイミーの過去のことを知っていた. だからこそエドは過去の清算をエイミーにしてもらいたがった. エイミーがカミカゼ((エイミーがスタント役として活動するときの名前.))になったのも, 自分を消そうとしているのも全て知っていた上で, その過去に向き合ってほしかった. そうでないと, 自分の死を受け入れ, 乗り越えることができないと思ったから……

エドのしたことは, 単なる少し長い遺書にしては凝りすぎているし, 幸せをエイミーに提供し続けるには期間が短すぎる. 彼がやったことは, 過去を乗り越える力を自分の死後にエイミーが自分で身につけられるように指導, いやおせっかいをすることだった. そして彼女は無事母親とも仲直りをし, エドの死を乗り越えることもできたのだ.

Promise

エドはどこまでも優しい. 最後に “I love you.” と告げたその声も優しい. しかし彼女はいつまでもエドに囚われるわけにもいかない.

彼女は最後, 男と食事の約束(promise)をする. それはエドが教えたことでもある.

おまけ

博士号をとって祝福されるっていいなぁ……憧れるなぁ……

Conclusion

ひとつだけ確かなことは, 彼ほど本気で恋をする男はいない, ということです.

本気の恋だからこそ, エドは嫉妬よりも何よりもエイミーが幸せになることを望んだ. そしてその望みが叶えばいいと彼は大量の仕掛けを講じた. 仕掛け通りに彼女が動くことが彼の願いであり, その願いが叶うことが彼の幸せでもあった. それは最後のエドのエイミーへの指導でもあった.

今を生きていなくても, テクノロジーの力で未来に寄与することさえできる. 彼が変えたのは生前に愛した女性の人生でだった. 愛した女性を死んでも幸せにする, なんて素晴らしい男だろう, なんて幸運な女性だろう.

今までごちゃごちゃ書いてきましたが, ものすごくいい映画です. 映画としての満足度は今年イチバン高かったんじゃないかな.

女性が男性に取り込まれる話でもないし, 解放はされるけど呪縛からの解放というほど重い話でもないので気楽に見ても楽しめると思います. すごく良い話です. そして主張しすぎない的確な塩梅の音楽, 非の打ち所のほぼない演技(特にエイミー), 長い話なのに飽きさせない脚本, 演出が総合的に効いています.

素晴らしい作品ですので, 騙されたと思って劇場へ一度足をお運びください.

補足

  • 引用は, 字幕のセリフの僕の曖昧な記憶により再現です. 実際のものとは異なる場合があると思われます(1 回読んだだけじゃ覚えられないよ!).
  • 原作が出ているようです. 僕は未読です.

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